お悩み
私は保険会社に勤めており、彼は2年下の後輩でした。
一見快活で、誰とでも馴染めるタイプの新入社員でしたが、
私は、会った時から、彼に自分と同じ匂いを感じていました。
こういっても分かってもらえないでしょうが、
心に傷を隠している者だけが放つ、息苦しさのような異臭です。
彼が私の部署に配属され、彼を指導していくうちに、
私の勘は、見事に当たっているのを実感しました。
そんな二人が体の関係を持つのに時間はかかりませんでした。
お互い自分に復讐するように、自分の傷をなめ合うように
相手の躰を激しくむさぼりあいました。
そういった時間の経過と共に、先輩・後輩という立場は急に薄れていき、
彼は敬語すら使わなくなっていきました。
会社でもそっけなくなり私への笑顔もなくなりましたが、
周りは相性が合わないのだろうとぐらいしか気づきませんでした。
私は、はじめコミュニュケーションの違いや表現方法が違っていても、
ふたりは、ソウルメイトなのだと思っていました。
だから、生まれて初めて、同じ経験をした人以外にわかってもらえないような
苦悩を分かり合えると、助け合えると、勝手に思っていたのです。
私の母は、うつ病で、アルコール中毒でした。
父は出張で家にいることが少なく、たまに帰っても、
母と私にはそんなに興味も示さず、喧嘩さえしない冷たい状態でした。
私が生まれる前に父には愛人がおり、愛人と別れた後も母はその人の悪口を
私に吐き続けており、「お前が生まれなかったら、離婚できていたのに」と
言われ続けて育ちました。
事業家だったため、お金の苦労はしませんでしたが、小さい頃から、
私は自分の居場所がどこにもないことを感じ続けていきてきました。
同居していた祖母が私を育てたようなものですが、姑である祖母と母の仲は
良いはずはなく、祖母からはいつも母の悪態を聞かされていました。
彼のほうは、3人兄弟の末っ子でしたが、やはり両親の仲が悪く、
食事時でも、殴り合い喧嘩になり、いつも落ち着かずビクビクしていたそうです。
時には、母親が包丁を持ち出すこともあり、警察沙汰にもなり、
家も転々と引っ越さざるおえないようでした。
そんな彼が成長して、人を信じなくなり、役者が役を演じるように
会社では、好青年を演じていたわけです。
そして私も、人に一度も気を許すことなく、能面をかぶったように
いつも冷静なキャリアウーマンを演じていました。
こんなにも、お互い自分の心を開いてぶつかっていったのに、
本物の恋だと信じたのに、もう私にはどうしていいかわかりません。
Counselor's Advice
随分以前から「愛着障害」の方から多くの相談を受けてきました。
「愛着障害」とは、人間形成ができる一番大切な幼少時に、しっかりと
安定した愛情を受けることなく育ったため、自他ともに信じられなくなり、
友人や恋人など対人関係をはじめ、自分自身が生きる指針をゆがめ、
自傷的、あるいは逃避的、攻撃的になってしまう障害です。
ほとんどすべてが、本人のせいではなく、育った環境に由来するものです。
ただ、自分が「愛情障害」だと気づく人は少なく、なおることもなく、
一生、複雑な人生を送る人も多くおられます。
本人が気づかないくらいですから、友人や恋人が気づくことも稀です。
「すごく愛し合っているのに結婚したくないと言い張る」
「自分は家庭をもてるような人間ではないと自傷する」
「自分の子供は持ちたくない、血縁を残すことなく死にたいという」
等と相手にいわれ、どうしてなのか分からいという人の話を耳にします。
その人の相手は、ほとんど「愛着障害」の傷が癒えてないのです。
「愛着障害」の人は他人も信用しませんが、自分も信用できません。
勿論、自分自身を愛せないので、他人を愛することも非常に難しいのです。
外見や態度、浅い付き合いぐらいなら、普通の人は
「愛着障害」かどうかはわかりません。
ちょっと変わったところがあっても、性格からきたものか個性なのかと
思うくらいです。
ただ、自分が「愛着障害」を持っている人は、このご相談者のように
相手が自分と同じ生きづらさをもっていることに、すぐ気づくのです。
だから、ソウルメイトなどと誤解してしまうのです。
「愛着障害」の人を完治させるのは、命がけです。
なにしろ、赤ちゃんの時のすべてを他のゆだねきった安らぎから
再体験させていかなければならいからです。
しかも、相手はどんなに親しくなってもなかなか心を開いてくれません。
心を開くことに、非常な恐怖をもっているからです。
騙されるかもしれない、脅されるかもしれない、軽蔑されるかもしれない・・
安心したことのない、受けいられたことのない魂は、むき出しのままです。
だから、仮面をかぶったり、役を演じようとしたり、あるいは激しく拒絶します。
そのくせ、「自分のことを信じないのか?」と迫ります。
「愛している」「愛されている」ことが信じられないので、
しつこいほど「愛」を確認し、心配し、相手を支配しようとします。
縋りつくことと、拒絶することの極端な繰り返しの毎日です。
相談者のかたは、自分の傷も完治していないのに、相手を助けようとされています。
相手も貴女を必要としながら、貴女と距離が縮まれば縮まるほど、
大嫌いな自分と向きあっているような恐怖に陥っていくのです。
私は「愛着障害」者同士のおふたりが、このまま愛し続けていくのは、
想像以上に非常に難しいことだと思います。
どちらかが、「愛着障害」から完全に立ち直った状態であれば、
一番素晴らしいコーチになれるのですが、
ほんの少しでも、自分自身の傷が癒えてないと、
付き合っていく間の、ささいな言動から、パカッと傷口が開きかねないからです。
それでも、なお愛していきたいなら、
一生、命がけで血まみれ覚悟で彼を支えていく非常に厳しい覚悟が不可欠です。
女性というより、彼の求めているのは、母なのです。
無償の愛をささげ続けるのは、人間として並大抵のことではありません。
相手は芯から人間を信じられない、しかもプライドの高い大人です。
そして、貴女自身も同量の愛が、無償の愛が必要なのです。
近づけば近づくほど傷つけあってしまう針ネズミのように、
まずはお互いの適正距離を測るところからのスタートですね。
男女というより、激しい人間同士のぶつかり合いになります。
でも、出会ったことが宿命なら、受けて立つのも生きる課題かもしれません。
ライタープロフィール
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人には聞こえない音・人声を見聞きし不思議な出来事を数多く経験する中で陰陽道・密教などを学ぶことにより感性を研ぎ澄ませてきた先生です。
過去にうけた心の傷やトラウマに寄り添いながら、大きな愛で相談者を包み込み、知らないうちに凝り固まってしまった心を優しく解きほぐしていきます。
ひとつひとつ丹念に難問の糸を解き、心のバランスを組み立てなおし、相談者の魂の本質へと近づける環境づくりを致します。
一緒に辛い過去を乗り越えていきましょう。
朱龍先生の占い師プロフィールはこちら
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