皆さんは漫画家、手塚治虫先生をご存知でしょうか。“漫画界の神様”の異名を持つ方であります。そして、漫画「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」と児童向けの漫画作品を世に多く残している印象があります。しかし、手塚氏は漫画家としての顔だけではなく医師免許を持つ事や、歴史や昆虫の知識も博識な事から、手掛ける作品のジャンルが非常に幅広く、社会問題への提唱を投げかけるのも作品の特徴です。自身の哲学を織り交ぜた、社会風刺の大人向け漫画作品というのも世に多数生み出しています。
手塚作品の普遍的テーマの一つに、「性教育」というものがありました。今回は漫画「アポロの歌」より手塚氏に学ぶ「愛」と「性」について考察をしていきたいと思います。
・愛と性は「命」である!
男女が出会い、愛しパートナーシップを築き、性行動を行う事により「命」に繋がるのだと非常にシンプルに伝えています。そしてその中でも、人を愛する事はいかに尊い事なのかを作品中で表現しているのです。
作品中のあるシーンにて、主人公は動物達の交尾をする姿を見て戸惑う場面があります。そこで主人公は「動物は愛する事にすごくまじめで真剣だ」「なぜ人間の男と女は、トラブルが多いんだろう。裏切ったり、嘘をついたり、憎んだり、別れたり」「人間が高等だから、トラブルが多いのかい?」と疑問を投げかけるシーンがあります。そこで、手塚氏の意図を汲むとすれば『人間はもっと愛する事に真剣にならなければならない』というメッセージが込められているように感じられます。
・作品誕生の時代背景
例えば「愛」と「性」のことを考え話す時に、刺激的な感覚や、いたずらに面白おかしい感覚になる事はありますか?手塚氏は、そういった世の中の状況について疑問を呈しています。
漫画「アポロの歌」が出版された時代は、1970年代です。この時代では、性教育はタブーであったにも関わらず、刺激物としての性描写が世に出回り始めた時代でした。手塚氏はその状況に疑問を感じ、性教育を通じて“生命とは何か”を表現したかったのではと言われています。しかし時代は流れ、現代でも充分に通ずる部分は沢山あります。日本は世界の中でも遅れた性教育の水準でありながら、単なる刺激物になってしまった成人向け映像作品は世界的にみてもトップクラスに出回ってしまっている現状があります。今や子供でも見る事ができます。「愛」と「性」が単なる刺激的で面白おかしくなってしまった状況というのは、その副産物なのでしょう。
・手塚氏に学ぶ「愛」と「性」
手塚氏は「アポロの歌」以外にも「火の鳥」「ふしぎなメルモ」等で、少年誌、青年誌、少女漫画に向けて「性教育」や「生命」についての題材の作品を世に出しています。「性」のテーマについて、読みにくいのでは?と心配されるかもしれませんがいらやしさは感じられません。そして、時に厳しいストーリー展開でも、何処かあたたかく非常にシンプルに理解しやすく表現されています。
私達は今からでも「愛」と「性」について真剣に向き合い、これから生まれてくるかもしれない新しい命に、ごく当たり前な「性教育」を親としてできる日が来るように努める必要があるのではないでしょうか。これが正に、手塚氏が表現したかったテーマである「命」を代々へ繋いでいく事なのです。そして、「愛」と「性」の正体なのです。
・まとめ
愛する人とパートナーシップを築いたりスキンシップをする事は、基本的には楽しく幸せなものですし、必要以上に構えることはありません。それはいいとしても、知識が無い割に必要以上に茶化したままの考えでは、時に大人としての品格が疑われます。特に、何も知らない子供達には通用しないでしょう。
今一度、「愛」と「性」について勉強する機会を設けてみてはいかがでしょうか。また、手塚氏の数ある作品を読みながら考えてみるのもいいのかもしれません。
ライタープロフィール
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音楽や心理学や絵を描く事が大好き。
歌って悟れるイラストレーターになりたいな…と思っているいい大人です。
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